Share

第110話 小春を通せば通ると思うな

Penulis: 八月 猫
last update Tanggal publikasi: 2026-09-12 09:00:04

 その話を持ちかけられたのは、昼休みが終わった直後だった。

「倉橋さん、少しいいですか?」

 声をかけてきたのは事業企画部の部長だった。

「はい」

「ちょっと相談がありまして」

 手にしているのは、来期の新規投資案件に関する資料らしい。

「社長へ上げているんですが、なかなか承認が下りなくて」

「そうなんですか」

「内容自体は悪くないと思うんです。ただ、数字の見せ方が少し弱いのかもしれなくて」

 ここまでは普通の相談だった。

 だから私も資料を受け取ろうとした。

 けれど。

「倉橋さんから一言、社長に言ってもらえませんか?」

 手が止まった。

「私から、ですか?」

「ええ。倉橋さんの話なら社長も聞くでしょう?」

 悪意がある言い方ではなかった。

 むしろ、当然のようだった。

「『一度ちゃんと見てあげてください』くらいでいいんです。倉橋

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terbaru

  • 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜   第117話 そこは意外と慎重なんですね

    「帝人さん、決まりました?」「まだだ」 向かい側で、帝人さんは真剣な顔でメニューを見ている。 会議資料でも読んでいるような顔だ。「そんなに悩みます?」「種類が多い」「洋食屋さんですから」「ハンバーグだけで四種類ある必要があるのか」「ありますよ」「チーズ、目玉焼き、和風、大根おろし」「楽しそうじゃないですか」「選択肢を増やせばいいというものでもない」「メニューにまで経営判断みたいなこと言わないでください」 私が笑うと、帝人さんは少し不満そうにページをめくった。「小春は」「オムライスにします」「もう決めたのか」「ここに来る前から決めてました」「なら先に言え」「帝人さんの分まで決めるんですか?」「そういう意味じゃない」 結局、帝人さんはデミグラスソースのハンバーグを選んだ。 料理が運ばれてくると、今度はしばらく黙って食べる。「どうです?」「うまい」「よかった」「値段を考えれば、かなり――」「帝人さん」「何だ」「今日は評価しなくていいです」「感想を言っただけだ」「その続きを聞いたら絶対、原価とか回転率の話になります」 帝人さんが黙った。 当たっていたらしい。「普通に食べてください」「普通に食べている」「じゃあ普通の感想を」「小春と来てよかった」 危うくスプーンを落としそうになった。「お店の感想です」「店も悪くない」「順番が逆です」「俺にとっては合っている」 さらっと言って、また食事へ戻る。 本当にこういうところだけは慣れない。 私はオムライスを一口食べて、話題を

  • 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜   第116話 普通のお店に行きます

     金曜日の十八時。「帝人さん、行けますか?」「ああ」 執務室から出てきた帝人さんの手には、仕事用の鞄だけ。 追加の資料もない。「珍しいですね」「何がだ」「本当に仕事を持って帰らないんだなって」「今日は小春と食事に行く」「食事のあと仕事する可能性は?」「ない」「成長しましたね」「だから俺を子供扱いするな」 そう言いながらも、少し機嫌がいい。 私はバッグを持ち、エレベーターへ向かった。「店は決めたのか」「はい」「どこだ」「着いてからのお楽しみです」「なぜ隠す」「帝人さんが事前に調べそうだからです」「調べて何が悪い」「メニューと価格と口コミを全部見て、入る前から評価を始めるでしょう?」 帝人さんが黙った。「しますね?」「店を選ぶ以上、情報を確認するのは普通だ」「今日はしなくていいんです」「小春は確認したんだろう」「しましたけど、私は普通にお店を探しただけです」「何が違う」「帝人さんの場合、視察になります」 エレベーターの扉が開く。「今日は仕事じゃありません」 昨日、自分で言った言葉を返すと、帝人さんは何も言わずに乗り込んだ。 ◇◇◇◇ 連れてきたのは、駅から少し離れた洋食店だった。 大通りから一本入った場所にある、小さなお店。 テーブルは十卓ほど。 白いクロスもないし、入口に案内係もいない。 店先には手書きの黒板が置かれている。 帝人さんが看板を見た。「ここか」「はい」「予約は」「できません」 帝人さんが私を見る。「できない店を選んだのか」

  • 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜   第115話 これは仕事ではありません

     月曜日の午後。「小春。金曜の夜を空けろ」 執務室からいきなり言われて、私は予定表を開いた。「何か入りました?」「入った」「どちらの会社ですか?」「会社じゃない」「会食?」「違う」「財界関係ですか?」「違う」「では何です?」 帝人さんが私を見る。「食事に行く」「誰と?」「小春と」 指が止まった。「……私?」「ああ」「仕事ですか?」「違う」「じゃあ、どうして予定表に――」「まだ入れていない」 私は画面を確認した。 本当に空白だった。「金曜の夜は空いているだろう」「今のところは」「なら俺と食事に行く」「決定なんですか?」「誘っている」「今の言い方のどこがですか?」「小春が嫌なら断れる」「そこだけ聞くと誘ってるんですけどね」 帝人さんは少し考える。「小春。金曜の夜、俺と食事に行かないか」「急に普通になりましたね」「これならいいのか」「最初からそう言ってください」「時間がかかる」「数秒ですよ」 私は予定表を閉じた。「でも、どうしたんですか?」「何がだ」「この前もホテルで一緒に食事しましたし」「あれは仕事だった」「半分くらい途中から仕事じゃなかった気もしますけど」「今回は最初から仕事じゃない」 きっぱり言われる。「何かお祝いとか?」「ない」「相談?」「ない」「では、ただ食事に?」「ああ」 帝人さんは当然の顔をしている。

  • 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜   第114話 それだけじゃない

     金曜日の十八時十二分。 私は予定表を確認して、思わずもう一度時計を見た。 会議はすべて終了。 追加の来客なし。 今日中の決裁も残っていない。 未処理の案件は、月曜日へ回して問題のないものだけ。「……終わった」 小さく呟く。 珍しい。 とても珍しい。「小春」 執務室から呼ばれた。「はい」 入ると、帝人さんは最後の資料を閉じたところだった。「これで終わりだ」「本当に?」「何だその反応は」「念のためです。机の引き出しから新しい資料とか出てきませんよね?」「出てこない」「電話して会議を増やしたりも」「しない」「関連会社へ突然――」「小春」「はい」「今日は終わりだ」 帝人さんが少し呆れたように言った。 私は時計を見る。「十八時十五分にもなってません」「ああ」「すごいですね」「何がだ」「予定どおりに全部終わりました」 帝人さんの眉がわずかに動いた。「俺が予定どおり動けば珍しいのか」「かなり」「失礼だな」「この前まで、空いてる時間を見つけると仕事を入れてた人が言います?」 帝人さんは否定しなかった。 代わりに私を見る。「今週は、小春がかなり止めたからな」「止めましたね」 最初から帝人さんを出さなかった会議。 担当役員へ戻した案件。 急ぎではないのに急ぎとして持ち込まれた確認。 帝人さんがやれば確かに早い。 けれど、その人にしかできない仕事は他にもある。「来週もこの調子でお願いします」「毎日十八時に終わるとは言っていない」

  • 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜   第113話 帝人さんは一人しかいません

     金曜日の夕方。 私は帝人さんの執務室へ入って、机の上を見た。 そして、そのまま黙った。「何だ」 帝人さんが資料から顔を上げる。「……増えてません?」「何が」「仕事です」「仕事は増えるものだ」「自然現象みたいに言わないでください」 朝にはなかった資料が三冊。 タブレットにも新しい予定が追加されている。 そのうち二件は、今日の予定にはなかった。「この十九時からの会議、何ですか?」「関連会社の投資計画だ」「月曜日の予定でしたよね?」「資料が揃った。今日できる」「今日やる必要は?」「できるなら今日やればいい」 出た。 私は帝人さんの机の前まで行く。「帝人さん」「何だ」「できることと、やるべきことは別です」 昨日も似たようなことを言った気がする。 というより、この人には何度でも言う必要があるらしい。「月曜日にやる予定だったなら、月曜日で問題なかったんですよね?」「ああ」「では月曜日です」「小春」「戻します」「俺は今日でも構わない」「私は構います」 帝人さんが眉を寄せた。「なぜ小春が困る」「予定を管理しているからです。それに、今日全部やったら、空いた月曜日にまた別の仕事を入れるでしょう?」 沈黙。「入れますよね?」「必要ならな」「だから駄目なんです」 その時、扉がノックされた。「失礼いたします」 榊原さんが入ってくる。 手にはまた資料。 嫌な予感しかしない。「社長、こちらの確認を――」「榊原さん」「はい」「帝人さんが

  • 天上天下唯我独妻!!〜私、最強の御曹司よりも強いらしいですよ?〜   第112話 ここから先は私が止めます

     午後二時から始まった会議は、予定では一時間半だった。 皇グループが進めている海外企業との業務提携について、最終条件を確認する重要な会議だ。 帝人さんが入室する前に、私は予定をもう一度確認した。「十六時から財務部との打ち合わせがあります。そのあと十七時半に来客です」「分かっている」「会議中に別件を増やさないでくださいね」「俺から増やすつもりはない」「帝人さんから、は」「何が言いたい」「外から来ても、全部受けないでくださいという意味です」 帝人さんは少し眉を寄せた。「必要なら見る」「必要かどうかは私が確認します」「小春が?」「はい。帝人さんを途中で呼び出す必要があるものだけ通します」 数秒、こちらを見る。「分かった」 意外なほど簡単に了承した。「いいんですか?」「小春が止めると言っているんだろう」「言いましたけど」「なら任せる。ただし、本当に俺の判断が必要なら止めるな」「もちろんです」 帝人さんが会議室へ入る。 扉が閉まって十分もしないうちに、最初の連絡が来た。 総務部からだった。 翌週予定されている社内行事について、帝人さんの確認が欲しいという。「今日中で大丈夫ですか?」『はい。ただ、できれば早めにいただけると』「では会議終了後に回します」 次。 広報部から取材依頼の確認。 これも今日中で問題ない。 三件目は関連会社からの相談。 内容を聞けば担当役員で処理できる。 四件目。「倉橋さん、社長に今すぐ確認していただけませんか」 企画部の社員が資料を抱えてやってきた。「何についてですか?」「来月発表予定の新サービスです。名称候補を三つまで絞ったんですが、

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status