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第110話 小春を通せば通ると思うな

Author: 八月 猫
last update Petsa ng paglalathala: 2026-09-12 09:00:04

 その話を持ちかけられたのは、昼休みが終わった直後だった。

「倉橋さん、少しいいですか?」

 声をかけてきたのは事業企画部の部長だった。

「はい」

「ちょっと相談がありまして」

 手にしているのは、来期の新規投資案件に関する資料らしい。

「社長へ上げているんですが、なかなか承認が下りなくて」

「そうなんですか」

「内容自体は悪くないと思うんです。ただ、数字の見せ方が少し弱いのかもしれなくて」

 ここまでは普通の相談だった。

 だから私も資料を受け取ろうとした。

 けれど。

「倉橋さんから一言、社長に言ってもらえませんか?」

 手が止まった。

「私から、ですか?」

「ええ。倉橋さんの話なら社長も聞くでしょう?」

 悪意がある言い方ではなかった。

 むしろ、当然のようだった。

「『一度ちゃんと見てあげてください』くらいでいいんです。倉橋

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